当院では、ドライアイに対する治療法として、新たにIPL治療を導入いたしました。
ドライアイに対するIPL治療とは?
ドライアイは、涙の量が減ったり、涙の質が低下したりすることで、目の表面全体に涙が行き渡らず、潤いが低下している状態です。目が疲れる、ごろごろする、痛い、かすんで見えづらいといった症状が現れます。これまでは、潤いを保つための目薬や、涙の排出口(涙点)に栓をして涙を目の表面に留める「涙点プラグ」を使った治療が行われてきました。
近年、新たなドライアイ治療として「IPL治療」が注目されています。
ドライアイの原因は、パソコンやスマートフォンの長時間使用、エアコンによる室内の乾燥、加齢、ストレスなどが考えられますが、「マイボーム腺機能不全」も原因の1つです。上下のまぶたの裏側には、涙の蒸発を防ぐ脂を分泌している「マイボーム腺」があります。このマイボーム腺が何らかの原因で詰まった状態がマイボーム腺機能不全です。涙の脂が不足することで涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを引き起こします。ドライアイの約86%でマイボーム腺機能不全がみられるというデータもあります※1。そして、このマイボーム腺機能不全に効果を示すのが、IPL治療なのです。
IPL治療は、特殊な光を照射することで、マイボーム腺を温めて詰まりを解消したり炎症を抑えたりする方法です。肌にやさしい光を当てるだけですので、患者さんへの負担は小さくて済みます。もともとは美容皮膚科領域で使用されてきたものですが、マイボーム腺機能不全によるドライアイにも有効であることが分かっています。2023年に発行された『マイボーム腺機能不全診療ガイドライン』にも記載されている治療法です。
当院では、国から承認されているルミナス社「M22」という機器を使用しています。
※1:Lemp, et al. Cornea. 2012 May;31(5):472-8.
IPL治療の効果
IPL治療でマイボーム腺の詰まりや炎症が解消すると、脂の分泌が正常化されて涙が蒸発しにくくなり、ドライアイの症状が改善することが期待されます。
- 自覚症状が81%改善した※2
- NIBUT(非侵襲涙液破壊時間:涙の質を評価する指標)が84%改善した※3
といった研究結果もあります。
効果の現れ方には個人差がありますが、当院では月に1回、4ヵ月連続して治療を受けることをおすすめしています(症状の改善具合などによって、回数は変わる場合があります)。
※2:Arita, et al. Ocul Surf. 2019 Jan;17(1):104-110.
※3:Arita, et al. Cornea. 2018 Dec;37(12):1566-1571.
IPL治療の対象となる人
- 目薬や涙点プラグを使ってドライアイ治療をしているが、症状が改善しない方
- 涙の脂不足によるドライアイの方
事前の診察によって、IPL治療の対象となるかどうか確認します。
IPL治療を受けられない人
- 妊婦および授乳中の方
- 治療部位に日焼けをしている方
- 光過敏症の方、または光過敏性を高める薬剤を使用している方
- てんかん発作を起こしたことがある方
- ケロイド体質の方
- 血液凝固能(血液が固まる能力)に異常のある方
- 前がん病変や皮膚がんのある方、または過去に皮膚がんにかかったことのある方
- その他、診察によって対象とならないと判断された方
実際の治療の流れ
IPL治療前の診察
診察・検査を行い、IPL 治療の対象となるかどうか確認します。
対象となる方には、治療について詳しく説明し、患者さんの同意を得たうえで、IPL治療のご予約をお取りします(診察当日に照射可能な場合もあります)。
IPLの照射
- メイクを落としていただきます。
- 眼球を守るためのアイマスクを付けます。
- 照射部位に冷却ジェルを塗ります。
- こめかみ〜下まぶた〜鼻にかけて、IPLを照射します。
- ジェルを拭き取り、目の周辺を洗浄したら終了です。日焼け止めを塗りご帰宅となります。
副作用について
- IPL照射中に、ゴムではじかれるような痛みやひりひりした痛みなどが生じる場合があります。
- 治療後は、照射した部分の皮膚に赤みが出ることがあります。通常は数時間で落ち着きます。
費用
1回7,000円(税別)
※IPL治療は自費診療となります。